( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです [転載禁止]©2ch.net

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         のんびりブーン系について語ったり、規制の避難地に。
         当館でブーン系を楽しむのはいかがですか?

( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★52
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久しぶりの総合感想
紅白パワーすごい

シベリアは今日も通常営業

シベリアの朝は早い

シベリアの夜は深い

まぁ詩的

シベリアの昼は?

赤い

昼間から酒飲んで顔真っ赤なやつらばかりだからな

祭の熱気もいいけどここの変わらない雰囲気は癒されるな

たまに覗きに来てはまったりしてる
夏だし涼しい所がいい

冬は?

身を寄せ合う為に覗きに来る

またいつか祭りとか感想会とかやりたいね

紅白だぞ妖精のみんな

わーい紅白だー

ここも紅白会場のひとつなんですよ
( ^ω^)夏のようです

( ^ω^)「ただいまだお・・・」

ブーンは自分のアパートに帰ってきた。
慣れない仕事の疲れで重くなった右手を意識せずに動かして、ドアを開けた。
ブーンの部屋は暗く、まだ嗅ぎなれない新居の香りがした。
自分ひとりしか住んでいないというのに、わざわざあいさつをするのは寂しくならないようにする工夫だった。
返してくれる者が居ない挨拶は、より一層寂しさを生み出すだけなのではないかという疑問もあったが、慣習がそれを無視させた。
学生の頃からは幾分かマシになったアパートは、本質的に学生時代と変わらない虚しさをブーンに与え続けていた。
電灯をつけて、ドアのすぐ隣にある冷蔵庫に車と家の鍵を置く。
ここにおいておかなければ、すぐに居場所がわからなくなってしまうからだ。
特に中身のない重たい鞄を床に置き、それは下の階に迷惑にならないように適当かつ慎重に置き、ブーンは椅子に座った。
もしここで座らなければ、そのまま床に倒れ伏して朝を迎える可能性まであると、ブーンは恐れていた。
椅子に5分間座り、息を整えた。
このままではスーツがだめになってしまう、と残り少ない気合を入れてブーンは立ち上がり、着ていたスーツを片付けた。
そのままジャージ姿になってパソコンに向かうと、自分がまだ学生であるという錯覚に襲われた。
それは錯覚に過ぎない。
学生時代にあった、無限にあると思われていた時間を消費して今のブーンはお金を生み出していた。
それは体力も平行して消費されていたが、ブーンはそれが労働というものなのだろうと、納得したふりをしていた。
簡単な思考変換ではなかったが、ブーンは現状に、大学を卒業して働いている今に満足しようとしていた。

( ^ω^)(今の僕にはお金があるお、学生の頃に買えなかったいろんなものが買えるんだお)

僕は豊かになったんだ、とブーンは納得しようとした。
表面上それは成功していた。
先行きが明らかに不安定である年金をアテにした生活を送るつもりはなかったが、まだ貯蓄をする気にはなれなかった。
パソコンのすぐ右にある本棚にはあの頃に買えなかったいろいろなものが詰まっていた。
それは初任給から始まった給料を使い、たとえ学生時代と食べるものが変わらなくてもかまわないと割り切ってまで買い集めたコレクションだった。
小さな酒瓶、可愛い女の子のフィギュア、ゲーム、あの頃は買えなかった限定版のDVDBOX。
何もかも、小さかった自分では手に入れられないものたちだった。
例えそれらが未だ袋から開けられていなくても、自分には価値のあるものだと信じようとしていた。
ブーンはパソコンを立ち上げて、古くなったパソコンの起動の遅さを紛らわすために席を立った。
床には脱いだ衣類が堆積しつつあり、それらを洗濯機まで追放して、洗濯機を動かすことは時間の関係上諦めた。
キッチンから戻ってきても、まだ彼の相棒は寝ぼけていた。
それに苛立ってはいけないと、ブーンは小さな自制心と現状を無視する経験を利用して目をそらした。
もう少しで埃がたまってしまうかもしれない本棚から、ブックカバーで中身の見えない本を適当に一冊取り出した。
ブックカバーは本を傷つけないために、大事に大事に扱うために中学の頃から始めた習慣だったが、結局ブーンは丁寧な人になれなかった。
適当に取った本は彼が好きなスペースオペラの小説だった。
買ったのは大学生の頃で、ブーンとしては新品を買いたかったが、学生の資本力は中古品以外を許さなかった。
何度も読んだためにブックカバーは所々が擦り切れていたが、気にはならなかった。
ブーンがその本をめくる前に、彼の相棒は眠りから覚めて充分な運動が出来るようになった。
どれくらいの間隔で目覚めるかを測ったことは無いが、ブーンは極めて自然な流れで本を閉じ、パソコンに向き直った。
ブーンは義務感からニュースサイトをあさり、なるべく左右双方をバランスよく報道するマスコミから情報を摂取した。
外国のテロ、政府のスキャンダル、変わらない支持率、条約の脱退、梅雨入り前の紫外線について。
くだらない、とブーンは表情を変えずにニュースを流していた。

地球の反対側で何が起ころうと、隣町で何が起ころうと今のブーンにはそれについて考える余裕はなかった。
ブーンはただ学生時代の習慣のままに、興味のないニュースを見続けた。

「続いてのニュースはVIP球場におけるガス漏れについてです。昨日のガス漏れによる重症者は520名となり一帯は封鎖が続けられています」
「事故当時VIP球場では5万人の観客がシベリア・ニーソクの試合を観戦しており、選手を含めた多くの人々が入院を余儀なくされています」

      私  ■ ■ ■ ■ の 一 ■ を■   ■ し ■し    ■!

VIP球場という単語に、ブーンはようやく表情を変えた。
それはピクリ、と頬が動いた程度であったがその単語はブーンの脳から情報を引き出していった。
VIP球場は彼が大学生の頃、友人たちと野球の観戦を見に行った場所だった。
大学の授業を早めに切り上げて、ビールとつまみをクーラボックスに放り込み、大きくなった子供として大声を上げながら試合を見たのだ。
アルコールの作用もあいまって、試合の結果に関係なく、楽しい時間をすごすことが出来た。

「VIP球場では一昨年も同様のガス漏れ事故が発生しており、ずさんな管理体制が改善されていないことが以前から指摘され」

アルコールのせいではなかった。
あの日、ブーンたちは事故にあった。
あれほど巨大な野球場という空間でガス漏れ、そしてガスによる被害なんて起こりえるのだろうかという疑問は常に持っていた。
ビールを片手に隣にいたドクオなんかは常に立って選手を応援していた。
そうだったはずだ、そうだったらしい、とブーンはそこからの記憶の断絶を嘆いた。
試合が3回裏だったかそのあたりまでの記憶しかない。それまでは楽しかったが、そこから先の記憶は病院だった。
朦朧とする意識と、何か呼吸器のようなものを付けられた苦しさでまともに目も開けなかった。
あなたはガス漏れ事故にあったのよ、無事でよかったわ。
婦警さんなのかナースさんだったのかは覚えていない、そんなことを言われたことをブーンは覚えていた。
その人の声が優しくて心地よかったなと、くだらないことを考えていたことは覚えていた。
次に目が覚めると定員8人のところを12人詰め込んだ病室の天上が見えた。

友人たちも一緒だった。ブーンは皆の無事を心から喜んだ。
やがて目が覚めると、すぐに退院になった。
ガスによる健康被害は軽微なもので、重症患者のためにも一刻も早く病室を空けなければならないようだった。
ブーンにとっては自分と大切な友人たちが無事であれば、まずはそれでよかった。
タクシーでブーンのアパートまで帰り、残った酒を飲もうとしたが友人たちもブーンもけだるさで飲むことが出来なかった。
クーが機転を利かせて大学に電話をしていなかったら、翌日の怠惰な生活は失われていただろう。
ブーンたちは公欠をもらい、翌日の昼まで寝て、いつも通りに安い食事をとり、大学のサークル棟で遊び、アルコールを飲んで眠った。
ブーンたちにとっては自分たちが無事だった事故でさえ、一つのアトラクションに過ぎなかった。
世の中から白い目で見られない程度にハメをはずし、非日常的出来事に巻き込まれたことを喜んだ。
結局、ブーンたちは日々に退屈していたのだ。それは勉強やバイトや、一緒に住んでもいいと思えるくらいの仲間たちと一緒に居るときでさえも。
世の中に氾濫している非日常を演出する媒体に、ブーンたちは生まれたときから浸っていた。
現実と理想との齟齬が常にあり、理想は物理現象さえも超えて実現不可能だった。
ブーンたちは朝も夜も無くしゃべり続けた、いつか訪れる『明日』というものをなんとなく、誤魔化し続けていた。
それはいずれ必ず来るであろう『明日』に備える必要があった、そのための大学だったはずだった。
しかしブーンたちは未来よりも今を優先していた。
その結果が現状だとしても、ブーンにとってはそんな過去の記憶が宝物だった。

ニュースを見終わった後、ブーンはパソコンのデスクトップに「メール受信」のポップアップが現れた。
ブーンはとても驚いた。今時の連絡手段はSNSなどが主流であり、メールのやり取りは大学関連か仕事がほとんどだった。
大学を卒業した今となっては、自宅のパソコンにくるメールは迷惑メールくらいだった。

( ^ω^)「だれからだお?」

ブーンは送り主を予測することが出来なかった。
最近は友人たちとも連絡を取っていなかった。
機械に疎い両親は連絡を電話でしか行わない。
ネットショッピングも最近は控えている。

ブーンは最近の生活ではほとんど発生しなかった純粋な疑問を抱きながら、メールソフトを起動した。
送り主はすぐにわかった。メールアドレスがアドレス帳に記録されていた。

( ^ω^)「・・・ツン」
ブーンは困惑した。
ツンはブーンの大学での友人であり、SNSでの連絡先を知っている。
メールが出会った最初の頃しか使っておらず、今はSNSでしか会話をしていない。
その友人がなぜいまさらメールを使うのか、ブーンにはわからなかった。
メールの題名には「思い出を思い出して」とだけ書いてあった。
題名という存在を自然に読むことが出来て、ブーンは自分でも少し驚いた。
メールに題名をつけるなど、友人同士ではほとんどなかったことだった。
ブーンは首をかしげながらメールを開くことにした。
マウスを動かし2回左クリックをすると、メールの本文が画面に表示された。
そこにあったのは2枚のJPEGファイルが貼り付けられており、それ以外には文字もなかった。
それは写真だった。
おそらくはポラロイド写真か、ポラロイド風に加工された写真だった。
ブーンはその写真に見覚えはなかった。
1枚目の写真には知らない男がだらしなく笑っていた。
その男はきっと酔っているのだろう、とブーンは予測した。
ブーンの幸せに満ちた大学時代の20%はアルコールで構成されていたためだ。
なぜこのような写真が貼ってあるのか、貼った記憶もなく、またそもそもこの写真の人物もブーンは記憶になかった。
2枚目の写真は少々黄ばんだ白地に黒いペンのようなもので文字が書かれていた。

私   ■は最  ■ の 一■を過 ■ し■し     ■!

ブーンはその写真に懐かしさを感じた。
しかしその懐かしさは原因不明であり、なぜ胸が締め付けられるのかブーンにはわからなかった。

( ^ω^)「ツンは何がやりたいんだお?」

ツンは聡明で切れ者で、男らしい女性だった。
どこか他人に対して壁を作っており、群れることを好んではいないようだった。
でも我々だけは別だ、とブーンは信じていた。
ブーンは大学のサークル仲間たちだけは、毎日を共に過ごしても苦痛にならない集団だと信じていた。
その集団の中に彼女もいた。
だから彼女は我々として集団で動くことに悪感情を抱いていないと。
ブーンはツンのことを頭のいい女性であると考えていた。
ツンの言葉は直線的で、単純でわかりやすいものだったためだ。
ブーンはそのファイルを2分ほど眺め、記憶の中にいる誰にも一致しないことを確認すると、もう一度ツンが打ったと思われる文字がないか探した。
やはり、文字は題名にしか存在しなかった。

( ^ω^)「思い出を思い出して・・・・なんのことなんだお」

ブーンは題名を声に出してみたが、頭の中から出てくる感情は混乱だけだった。
思い出すべき思い出があるのだろうか?とブーンは再度頭を捻り、ファイルを眺めた。

( ^ω^)「うーむ?」

ブーンは記憶力に自信があるわけではなかったが、それでも取った写真を見れば思い出す程度には覚えていると自負していた。
しかし数分考え込んでも思い出すことは出来なかった。
ブーンは「返信」のボタンを押し、久しぶりにメールを送ることにした。

( ^ω^)「そういえば、ツンと話すのも卒業以来だお」

懐かしさが胸からあふれ出て今日一日を台無しにする前に、ブーンは思い出をもう一度しまい込む事に成功した。
題名の欄に「久しぶりだお、どうしたんだお?」と打ち込む。
そうすると、メール本文に何を書いたらいいかわからなくなってしまった。
SNSのやりとりは短文で、まるで目の前にいる相手に声を出して会話しているかのようなものだった。
それに慣れたブーンは、手紙が電子化したメールという文化を忘れてしまっていた。
ブーンはまた数分間考え込んだ後、近状報告と近いうちにまた集まって遊ぼうという提案、そして送ってきた写真についての疑問を書いて送信することにした。

ブーンは返信を待とうとし、メールには既読などのシステムが存在しないことを思い出した。
文化を忘れるということはこういうことか、とブーンは苦笑しメールソフトを閉じた。
手紙は数秒で返ってくるものではないと思い出したためだ。
ブーンはまだ汗を流していないことも思い出し、体を洗うために風呂場へと向かった。
パソコンから離れて風呂場に向かうだけなのに、ブーンは後ろ髪を引かれる思いがした。
一度振り返ってパソコンの画面を見ても、メールを受信したというポップアップはなかった。

( ^ω^)「・・・・〜〜♪」

ブーンは無意識に鼻歌を歌っていた。
それはブーンが大学時代によく唄っていた歌であり、中学生の頃から追いかけているミュージシャンの歌だった。
メロディーだけの音でもブーンの記憶から懐かしさを抽出するには充分だった。
シャワーを浴び始めると、先ほどのメールの謎も仕事の辛さもどうでもよくなっていた。
ブーンの頭では過去の思い出が再生されていた。
体を拭くときも、パジャマに着替えるときも、大学時代の夏の思い出がフラッシュバックしていた。
ブーンのテンションが低いときにフラッシュバックがあったのなら、ブーンは泣き出していたかもしれない。
楽しかった思い出と楽しくない今を比較して、思い出を選んでしまうのはブーンの悪い癖だった。
しかし今のブーンは落ち込むこともなく、激しい感情を抱くこともなく、映像を眺めるように過去を思い出していた。
ブーンが再び机の前に座ると、ほとんど無意識で写真に触れながらパソコンを操作した。
パソコンには大学時代の写真が保存されていた。
それらは時系列ごとにファイルに分けられ、一目でわかるように日付と場所やイベント名が書かれていた。
春も夏も秋も冬も、ブーンは家族とも呼べる友人たちと過ごしていた。
写真の中の彼らは何かに笑っていて、何かに疲れて眠っていた。
ブーンは今まで何をやってきたかをしっかりと思い出すことが出来た。
それは不自然なほどに精巧だったが、ブーンは気にしなかった。
時計を確認し、もうすぐ寝るべき時間であること認識できたが、マウスを操る手は止まらなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

それは閉園になる遊園地に遊びに行った夏だった。
僕たちはその遊園地に行った事はなかったが、無くなる物惜しさを言い訳にみんなで集まって遊ぶことにした。
プールが併設されていて、僕たちは二年ぶりにお互いの水着姿を見せ合うことになった。
クーはびっくりどっきりな胸が見えるビキニを着ていて、ツンは競泳用の水着を着ていた。
ツンは立体性に欠ける見た目だったが、そんなことは気にならなかった。

その金髪と楽しそうに目を細めて歌う彼女はとても、とても美しかった。
普段は理性という仮面を被り、誰にも素顔を見せないような振る舞いをする彼女の笑顔は、本物だと信じられた。

>>526 ミス
ハインとクーが豊満な胸でツンをからかったり、兄者と弟者がジョルジュのぴちぴちな海パンを脱がせようとしたり、目のやりどころに困っているドクオをショボンが笑っていたりした。
プール自体は子供向けのものが多く潜って泳ぐようなことはほとんど出来なかった。
ウォータースライダーに乗るための階段が高くて、震えているドクオを連れまわすクーがまぶしかった。
ツンがトンボを肩に乗せていた。
水が流れる巨大なゴム製の半球に登ろうとしててっぺんにいた流石兄弟たちが飛び跳ねるから、全く登れなかった。
そこに太陽があることも忘れて、プール用の日焼け止めが流されるほどに遊びつくして、ひたすらに笑っていた。
僕たちが一緒に居るというだけでアルコールがいらないほど楽しい時間をすごせるのだと再認識できた。
プールで日が傾くまで遊びとおして、結局僕たちはアトラクションで遊ぶ時間をなくしてしまった。
それでもよかった、充分に楽しかった。
ツンの家までみんなで帰って、お菓子とアルコールと食べ物を用意した。
体力がなくなっていることに気がつかなくて、僕たちはひどく酔っ払ってしまった。
ドクオが気絶して、隣の部屋に放り込まれて「ぐえ」と音がした。
最後に飲んだウィスキーがよくなかった、僕も意識を失いかけていた。
わいわいと脈絡も筋もない会話を続けていると、歌声が聞こえてきた。
流石兄妹とハインとジョルジュが綺麗な声で歌っていた。

( ´_ゝ`)(´<_`  )「Cheer up, Sleepy Jean. Oh, what can it mean.」

それがどんな意味だったかは思い出せない。
でもそれは美しい歌だった。どこか懐かしいような悲しいような、何かを信じるような。

ξ*゚听)ξ「楽しいわ、ブーン」

(*^ω^)「僕もたのしいお」

ツンは赤くなった顔で鼻歌を歌っていた。
酒に弱いツンはかなり抑え気味に飲んでいたが、それでも彼女は酔っていた。
その金髪と楽しそうに目を細めて歌う彼女はとても、とても美しかった。
普段は理性という仮面を被り、誰にも素顔を見せないような振る舞いをする彼女の笑顔は、本物だと信じられた。

川*゚ -゚)「どっせい!」

クーがツンに抱きついた。その大きな胸と身長差からツンは窒息しそうになっていた。

ξ*;゚听)ξ「ちょっとお、なにするのよう」

川*゚ -゚)「いやなに、見せつけているのさ。いやあ女に生まれてよかったなぁ」

そう言ってクーはこっちを見た。僕だけに効く強烈ないたずらだった。
正直やめて欲しかったが、女の子に抱きつかれているツンというのも、僕としては充分に価値のある被写体だった。
最高の時間だった。まだ眠るわけにはいかなかった。
しかしアルコールの過剰摂取による眠気は強力だった。

川*゚ -゚)「おーいブーン、寝るんじゃない。ドクオは雑魚だから仕方ないとして、お前はまだ飲めるだろうが」

クーにとって飲むことは時間を楽しむこととイコールであるようだった。
クーは豊満な胸でまるで母親であるかのようにツンを胸に沈めて撫で回していた。
そんなことができるのなら僕も女に生まれたかったと本気で思った。
視界の端でショボンがジンとテキーラを使った殺人的なカクテルをジョルジュに飲ませていた。
ジョルジュはそれを味わわないために一気飲みし、そのまま横にパタリと倒れた。
まるで漫画かアニメのような光景だった。
いつの間にかクーはツンを抱きしめたまま眠っていた。
うおおおおおおお、と叫びたくなるのをこらえつつ写真を撮っておいた。
ハインがそんな彼女らをゆっくり横に倒してタオルを掛けた。

从 ゚∀从「まーだ言ってないのかよお前は」

(*^ω^)「何をだお?」

从 ゚∀从「言う必要があるのかなあ?ブーン君?」

僕はツンのことが好きだった、それは彼女が部室のドアを開けて入ってきた瞬間からそうだった。。
4年間かけて彼女を観察し続けた結果、彼女は男性というものをどこか信じていないと考えられた。
きっと家庭環境に難があるのだろう。
彼女は家族の話になると否定的で、特に父親には不信感を丸出しにしていた。
彼女はキャリアを積み重ねて出世し、孤高の女性になりたいのだろうと分析することが出来た。
そうすることで家庭や男性を必要としないほどに社会的な立場を得ようとしているのだと。
そういう女性はパートナーを必要としない。不信感を抱く男性ならなおさらだ。
そんな人にいきなり告白してもよい結果は望めない。
だから時間をかけることにした。
ほかの人の何倍も何十倍も時間をかけて、彼女の巨大な外堀に小さなスプーンで土を投げ入れて埋めていく。
その忍耐と苦痛は、彼女と歩める未来への対価としてなら安いものだと決めていた。

(*^ω^)「まーだだお、まだ、まだまだなんだお」

从 ゚∀从「そのうちジジイとババアになっちまうぜ?子供もできねえぞ」

(*^ω^)「子供なんかいらないお、最終的に彼女が僕を愛してくれるならそれで」

それはもしかしたら、破滅願望に近いのかもしれない。
僕は悲劇の主役をやってみんなからの同情を求めているだけなのかもしれない。
でもそれでも、この好きだという気持ちはちゃんとここにあるのだと信じていた。
いつのまにか流石兄弟も眠りに落ち、せっかく隣の部屋に敷いた布団はどうやらドクオが独占することになりそうだった。
隣ではクーに抱きつかれたままツンがすーすーと寝息を立てている。
もし僕がちょっと理性のない男だったら手を出していたかもしれない。

(*^ω^)「あーあ、もうだめだお」

残っていたカクテルを飲み干すと、頭の働きを妨害してくる眠気に白旗を振って横に倒れる。
天井には電灯がついたままだが、目を閉じさえすれば睡眠という名の気絶には充分すぎる暗所が手に入った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ブーンが目を覚ますと白い天井が見えた。
カーテンが遮れなかった朝日が顔を叩いてブーンを起こそうとしていた。
ベッドからのそのそと這い出ると、マーガリン入りのバターロールを4つ食べ、野菜ジュースを飲んで健康的なフリをし、着替えをした。
ブーンは今の仕事を楽しいとは思っていなかった。
しかし同時に耐えがたい苦痛であるとも思っていなかった。
仕事の内容は望んでいたものでは無いが楽なものであり、楽なことをして金がもらえていることは幸せなことだと思うようにしていた。
「望んだように生きられないなら死んでるのと同じだ」という言葉がブーンの頭のどこかから湧き出た。
頭を振ってもその言葉は振り払われなかった。
望んだ人生とはなんだったのか、ブーンはこれから先のことを考えるべきところを、頭の中の思い出に答えを求めていた。
過ぎ去った時間は常に楽しかったように思えた。
その時に取りこぼしてきたものがとてももったいなく思えた。
しかしそれは過去のことであり、変えることが出来ないことは充分に承知していた。
結局その日、ブーンは頭の中から湧き出てくる楽しかった過去を振り払えなかった。
そのために上司から熱でもあるのか?と心配されたが、その言葉もブーンの頭には入らなかった。

自宅に帰ると、着替えるのもそこそこにパソコンの電源をつけてメールを確認した。
ツンからの返事はまだないままだった。
ブーンは少々いらだちながらSNSでツンにチャットを飛ばした。
しかしそれも返事がないままだった。

( ^ω^)「なにかあったのかお?これがヒントなのかお?」

ブーンはもう一度写真を見た。
見覚えはなく、また持っているどの写真にも一致しなかった。

( ^ω^)「思い出を思い出して、どの思い出だお?」

ブーンは大学時代4年間の出来事をよく覚えているつもりではあるが、そのためにどの思い出なのかを判別できないでいた。
目の前の画面に映る謎の写真はなにも応えなかった。

ブーンは大学時代4年間の出来事をよく覚えているつもりではあるが、そのためにどの思い出なのかを判別できないでいた。
目の前の画面に映る謎の写真はなにも応えなかった。
SNSの返事を諦めて、ブーンはまた大学時代の写真をあさり始めた。
1年目の写真には若さを感じることが出来た。写真に写る自分と仲間たちはまだ子供らしい高校生のような顔つきで酒を飲んでいた。
2年目になるとブーンたちの顔つきは大学生のそれになっていた。
不健康さを若さとテンションだけで押し切りひたすらに遊んで笑っている写真が多かった。
ブーンは写真を一つ一つ拡大して眺めるたびに、その時に行われた会話を正確に思い出すことが出来た。
3年目になると家族写真のような構成が増え始めた。
誰かの家で食事をしている写真、みんなで寝ている写真。
やっと集団としてお互いが特別な存在になった年だった。
4年目では似合わないスーツ姿の写真が増えた。
就職活動は自尊心と自己肯定感をひどく傷つけるもので、全員が疲れているようだった。
ブーンは持っている写真を印刷しなかった。
結局携帯電話での写真はプリントすればひどい解像度であることがすぐわかってしまうものだった。
こんなことなら高いカメラを買うべきだったのかもしれない、とブーンは後悔していた。
同時にカメラを買う金はなかったことも思い出し、また後悔した。
足りないものばかりだった、とブーンは過去を振り返った。
学生は時間だけを持っていて、社会人は金だけを持っていた。
ブーンは楽しい時間を過ごすにはそれら双方が必要であると考えていた。
ブーンは一旦目を閉じて、目から流れ込んできた懐かしさを整理した。
どの思い出が楽しかったのだろうか?どの思い出を思い出すべきなのだろうか?
椅子の背もたれに体重を預け、肺にあった使い古しの空気を吐き出した。
吐き出した空気が懐かしさと比較した現在の退屈さを連れて行ってくれた気がした。
もう一度メールソフトを起動し、ツンからのメールを読み直した。

私   ■は最  高 の 一年を過 ご しまし     ■!

ξ゚听)ξ「お願いよブーン、あの思い出なのよ」

( ゚ω゚) 

耳元で確かな息づかいを感じ、ブーンは飛びあがった。
ブーンは一瞬で吹き出てきた汗に不快さを感じながら、それ以上のなにかを探した。
部屋は相変わらず汚いままで、それ以外の何かは存在しなかった。

(;^ω^)「い、今のはツンの」

(;^ω^)「僕は、そんなに疲れてたのかお?」

部屋には脱ぎ散らかした衣服とゴミ箱に入りきらなかった紙くずなどが散乱していた。
二ヶ月近く掃除を行っていない部屋は新居であるはずなのにくたびれた印象を発していた。
ブーンはその惨状を見て、ツンがこんな汚い部屋に来るはずがないと笑ってしまった。
二週間分近い衣類たちは洗濯機の中に納められ、あふれ出いてたゴミたちはゴミ袋に押し込められた。
床の掃除は明日以降に諦め、ブーンは何も変わらないメール画面を閉じた。
ブーンはもう一度、自身が保存している写真のフォルダを開いた。
写真はどれも楽しそうな仲間たちを写していた。
アルコールに酔って馬鹿笑いをする仲間たち、ギターを弾いて自分を曝け出す自分たち、みんなで歌を唄い楽しい時間を共有していた日々。
写真を見れば何を唄っていたかすぐに思い出せることが出来た。
あの頃は楽しかった、というのは衰えた証拠ではないか?とブーンは考えていた。
それでもあの頃が楽しかったのは間違いないことだった。
一年ごとに楽しさの上限は更新され、そして満たされていった。
退屈に殺されぬように走り続け、走ること自体が楽しみでもあるような生活だった。
そして走り終えた今は、新たな道を歩き始めているはずだった。

( ^ω^)「違うお」

ブーンは最近の自分が心から笑えていないように思えた。
安心、共感、享楽、陶酔、それら全てが今の自分には全く存在していないように思えた。
ブーンは本棚を見た。
給料で買い集めたファンブックや同人誌、フィギュア、楽譜それら全てが無価値に見えた。
それらは間違いなく自分の欲しかったものだった。

しかし我慢しているうちに欲しくなくなってしまった。
それらは本当に欲しいものだったのだろうか?一体なぜ欲しいと思ったのだろうか?
欲しかった時はそれらが楽しかった、楽しかった時間を忘れないために、過ぎ去った時間を形に留めたかったのだろうか。
写真の中のブーンは何かに驚いていて、笑っていて、笑わせていた。
ブーンにはそれが本当に自分だったものなのか確信が持てなかった。
その笑顔は今の自分の笑顔とはかけ離れていた。
今でも笑うことは出来る、酔うことは出来る。
しかしそれは明日の仕事や来週のことを考えて、制御したものだった。
自己制御が可能になることは大人になることの第一歩であり、大人の条件でもあった。
しかしブーンは大人になることではなく、ただ老化したことへの言い訳に過ぎないのではないかと考えていた。
少年は青年になり、青年になるまでに捨ててしまった少年を取り戻そうとした。
手段にアルコールを使うという、極めて目的に反した方法で、子供であることを許されず大人にはなりなくなかった彼らは生きていた。
そして少年を取り戻すことはできず、中途半端に大人になっていった。

( ^ω^)「・・・・・・・」

ブーンは去年の夏の写真を眺めていた。
1日で急激に日に焼けてしまったせいか、真っ赤になった顔をさらに赤くなるためのアルコールを手に持って笑う仲間たち。
ツンに抱きついてしたり顔でこちらを見るクー、シェイカーでカクテルをつくるショボン、ジョルジュに無理やり酒を飲ませる流石兄、くたばりかけているドクオ。
狭い部屋で寝ているブーンたちは、赤の他人がすぐ隣に寝ているのに無防備に、もしかしたら実家よりも安心した表情で眠っていた。
この写真の風景は前日、夢に見た景色だった。
この旅は特に遠くに行くことを目的としたものではなかった。
ただ夏を楽しみたいという欲求を、20歳も過ぎた子供たちが発散したかっただけの旅だった。
旅に目的は必要なかった、旅の行き先すらも大して重要ではなかった。
その道中の会話やハプニング、そして食べて飲みながら眠る瞬間に全てが詰まっていた。
温泉でも遊園地でも水族館でも博物館でも誰かの家でも、それは口実に過ぎなかった。
行き先に魅力を感じている人たちもいただろう、ブーンは魅力を感じているふりをしていただけだった。

( ^ω^)「あの夏は最高だったんだお・・・」

夏の記憶はいつまでも頭の中にあった。
夏の匂いはすぐそこまで迫っていた。
ブーンは時間が足りないように思えた。
仕事を始めて学生でなくなってしまってから、ブーンは自分の時間を失い続けている錯覚に陥っていた。
それは錯覚ではなかったが、代償として金銭はブーンが今までに出来なかったことを可能にしていた。
問題は可能になった物事が、ブーンの心を埋められないことだった。
隙間に元々はなにがあったのか、ブーンにはわからなかった。
隙間は仕事によるストレスで広がり続けていた。
その隙間に自分さえも飲み込まれるのではないか。
ブーンはもう一度、メールソフトを起動した。
返信はなかった、だが返信は重要ではなかった。

私   達は最  高 の 一年を過 ご しまし     ■!

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閉園になると聞いた遊園地で遊んで帰ってきた日だった。
車に分乗して酒屋を回り、買えるだけの酒を用意していた。
僕達はツンの家まで帰った。
ツンの家は2DKで飲み会には最適だった。
ツンは偶然その部屋を選んだらしい、正直とても助かっている。
なぜなら安全に眠る部屋と騒ぐ部屋を分けて使うことが出来るからだ。
ツンも二部屋は持て余していたらしい。
プールで遊んだ後のだるい体を忘れて僕達はツンの家までたどり着いた。
もちろん出て行く必要がないほどの酒と食べ物は買ってある。
あとはこの中で眠ってしまうだけだ。
  _
( ゚∀゚)「たんまり買ってきたか〜?」

( ^ω^)「一週間分あるお、もうここに骨を埋めるつもりで飲むんだお」

( ´_ゝ`)「むしろここで死ね」

(´<_`  )「直接的表現だな兄者、むしろ病院には送らないくらいでいいんじゃないか」

从 ゚∀从「病院には送らないからここでお前達は死ぬ、諦めるんだな」

川 ゚ -゚)「やっぱり死ぬのか、頼むからうちの犬には加減してくれよ」

( ^ω^)「ドクオ、泣いていいんだお」

('A`)「ワン、ワンワン」

(´・ω・`)「そうじゃない・・・・いやもうそれでいいよ」

最初の一杯はビールなんて古臭いルールはなかった。
チューハイ、ビール、ハイボール、人それぞれだった。
つまみはチーズやするめやクラッカーやチョコ、とりあえず安くてたくさんあるものだ。
みんなが大きな声で乾杯!と言った。
疲れは一口目のアルコールで吹き飛ばなかったが、眠気の足音を遠ざけることは出来た。
ツンの家にはミニギターが一つあるだけだった。
結局ツンは歌を唄うことが好きだが、楽器に自分の時間を割く余裕はなかったようだ。
それでも壁にコード表を貼り付けているのは彼女の意地なのかもしれない。
ツンはそのミニギターを飲み会で被害を受けないように本棚の上に避難させていた。
酔いが回ってきたら使うことになるだろうから、ツンの努力と心配は無駄なものだった。
狭い部屋に押し込まれた僕達はなんでもないことを話し続けた。
その日のみんなの顔は日に焼けて、赤くなっていた。
その赤色がアルコールによってもう少し赤くなっていた。
クーはドクオを引き寄せてなにやらささやいていた。
ドクオは焼けた顔をさらに真っ赤にして何かを言い返していた。
その姿を流石兄弟が囃し立てていた。
いつもの光景で、まるで久々に帰ってきた親戚達と飲んでいるようだった。
パーソナルスペースは普通なら1mだったか。
僕達は狭い部屋の中ということもあるが、男子と女子が接しながら飲み合うことに悪い意味を見出さなかった。
4つ目の缶と2つ目のグラスを空けた時点でツンは自らミニギターを降ろした。
ツンはまだまともに弾く事が出来ないものだったが、ほかの仲間には簡単なものだった。

ξ*゚听)ξ「隣が空き部屋ってのは奇跡よね」

(*´_ゝ`)「何を唄おうか?」

(*‘A`)「いつものでいこうぜ!」

(*^ω^)「3、2、1、毎日毎日くだらないことをやっては」

よく僕達が部室で唄う歌だった。
それは先輩方を送る追い出しコンサートの〆の曲でもあった。
僕達のサークルでは全員が唄う共通の歌、。旅立つ自分と仲間達への歌だった。
歌は心を響かせて、その振動は空気を伝わって全員の振動を整えた。
整った音波は整った快感を全員に共有させた。
それは4分ほどの短い時間であったが、全員が一つになっている錯覚を作るには充分だった。
僕らには明確な未来予想図なんて描けなかった。
中途半端な才能とちょっとばかりの努力と今だけを見ていたい精神は、日を追うごとに捻じ曲がっていく自分の夢を直視できなかった。
忘れることも直視することも、そして自分で想った夢のことを、辛いと知っているのに構わず諦めていった。
世間が叶うよと言ってくれる夢は全て、すぐに飽きて消えてしまう即物的な夢だけだった。
ここに馬鹿な学生は一人もいなかった。
それでもバカ騒ぎをやめられないのは、今この瞬間が人生で最高の瞬間だと思えたからだ。
いずれはばらばらになってしまう仲間達が、一瞬だけ家族として友人ではなく兄弟姉妹として、得られない、得られなかった温かさを補給していたのだ。

ξ*゚听)ξ「最高ね、ブーン」

(*^ω^)「最高だお、ツン」

それが何に対して最高だったのか、きっと僕とツンの意見は違っていた。
でも僕はそんなことに気づかないフリをして、一瞬を共有することにした。。
ツンは美しい姿で笑っていた。何に笑っているかはわからなかった。
ツンの青い目には酔ってだらしなく壁にもたれかかる僕、僕だけが映っていた。
その目を一瞬だけでも独占できていることに、とても興奮できた。
ツンは片手を床について身を乗り出して僕と話していた。
内容はライブのことだったり二人が好きなアーティストの話だったり、歌詞の考察だったりした。
僕は酔っていて、普段以上におしゃべりになっていた。
そんな僕に釣られるようにツンも笑いながらおしゃべりを続けた。

ξ*゚听)ξ「だからサビにある【いったいどういう意味があるんだい?】っていうのは実は過去の自分達じゃなくて、一番のほうにあるチクチクの剃刀とかにある今の生活のことなの」

ξ*--)ξ「彼らは過去の自分達のことを忘れてないけれど、今だって幸せさ、幸せだよな?って言い聞かせているのよ。本当は剃刀を買い換えられないくらい生活に余裕が無くて、つらいけれど僕達は幸せさ、僕は幸せさ君といるからって。」

(*^ω^)「夢追いだった人が歌っているわりには現実を見ていて、つらいけど幸せなんだって言ってるんだおね」

ξ*゚听)ξ「そうなの!理想主義でも夢想でも悲観でもない、あの頃はよかったでもないの」

(*^ω^)「じゃあサビのホームカミングは嫁いだお姫様よりは学園祭のお姫様のほうが的確な翻訳になるのかお?」

ξ*--)ξ「そうよブーン、だって夢追いだった自分と比較するならどこかにいってしまった人じゃなくて若い頃に燃えた人になるわ」

若い頃に燃えているのは僕達だった。
ツンは歌詞の持つ意味が現状の自分達に当てはめられるとは考えなかったのだろうか。
楽しそうに歌詞の意味を解説するツンは普段のツンよりも、もっときれいだった。
僕達は音楽でつながっていたが、全員が同じ趣向をしているわけではなかった。
兄者と弟者はドラムやカホンなどの楽器を好み、ハインはひずませたギターが好きだった。
クーはピアノ、ドクオはベース、ジョルジュはクラシックギター、ショボンはなんでもできた。
僕は歌うこと自体が大好きで、ツンは楽器よりも歌詞を考えることが好きなようだった。
僕達全員が集まればオリジナルバンドだってできるかもしれないと思っていた。
結局学業や生活の都合が合わなくてそれは夢の話に終わった。
もしそんなことができていたら、もっと楽しい夏になったんだろうか。

川*゚∀゚)「だっはー!楽しい!楽しいぞドクオ!」

(;‘A`)「そうかそうか、水のもうな、な?」

ドクオが珍しく生き残っていた。
羽目をはずしたクーは鎖でつないでおかないと走り出しそうなテンションだったが、これは気絶する一歩手前であることは経験則でわかっていた。

川*゚∀゚)「口移しがいいなあドクオォ、んんん?」

( ´_ゝ`)「でました!普段はできる女をやってるクーさんの素顔!」

(´<_` )「実は獣のようにいろいろ強い彼女ですがペットのドクオさんに彼女を抑えられるのか!?」

  _
( ゚∀゚)「無理だな」

(*^ω^)「無理だお」

(;‘A`)「お前ら笑ってないで手伝えよ!」

( ´_ゝ`)「あらやだ口移しを?」

川 ゚ -゚)「殺すぞ」

(´<_`;)「急に素に戻るなよ」

その後すぐに眠ったクーをドクオが引き摺って隣の部屋に運んでいった。
結局ドクオは帰ってこなかったのだから、そういうことなのだろう。
ツンもまぶたが重くなっているようだった。
酔っていればどこでも寝床になりえた。
僕達は自分かほかの人の鞄を枕に部屋の隅で寝るのが普通だった。
しかしその日のツンはちょっと違っていた。
ツンは缶を机におくとそのまま僕の足を枕に机の下で横になってしまった。

(;^ω^)「・・・・・!?」

ξ--)ξ「zzz・・・・・・」

(;^ω^)「これ僕どうすればいいんだお?」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:aa69868e8407a14ba8117b78f27d82ae)

从 ゚∀从「寝ろ」

(;^ω^)「無理だお」

( ´_ゝ`)「あー・・・・ほら、日ごろの信頼が形になったと思えばね?」

(;^ω^)「形になったら寝れるのかお?」

(´<_` )「寝るという言葉の意味によって異なるな」

( ^ω^)「そういう話はしてるんじゃないお」

ツンは静かに寝息を立てていた。
その顔は穏やかで、まるで人形のような整った美しさがあった。
でも頭が発する熱と重量は僕の足を圧迫していた。
でもそれでもよかった、これは事故の一種だとしても彼女が僕と一緒に寝ているような錯覚を感じることができたのだから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ブーンは目覚ましでは起きなかった。
携帯電話は電源が切られていた。
電源を切った記憶はなかったが、ブーンは特に関心を持たなかった。
部屋は清潔とはいえなかったが床の散らばっていた小物や衣類は片付けられ、食器も棚に納められていた。
パソコンはつけっぱなしになっており、メールソフトが起動していたが新着はきていなかった。
ブーンは機械的にパソコンの前に座るとメールソフトを閉じた。
画面の右下に表示されているカレンダーでは今日が平日であることが示されていた。
平日は休みではなかったが、ブーンの頭の中に現在という言葉は存在していなかった。
ブーンは生理的な反応としての瞬きをすると写真が見えることに気がついた。
目を閉じるたびにそれぞれ異なる大学時代の思い出が見えた。

( ^ω^)「僕は今まで何をしていたんだお」

長く目を閉じていれば写真は動画に変わった。
流れ星を見に行った日、ひまわり畑を見に行った日、ジョルジュの実家に行った日、ツンが歌詞を書き上げた日、どれもが美しい思い出だった。
ブーンは眩暈にも近い眠気に襲われた。
たった今起床したばかりだというのに、ブーンは頭部の重量に耐えられないほどの睡魔に犯されていた。
ブーンは眠ることを歓迎していた。
最近見る夢はすべてが輝いていた過去の夢だった。

( ^ω^)「あの日、ツンは僕を枕にして寝てたんだお」

目を閉じればツンの寝顔が見えた。
まぶたの裏側がスクリーンとなり、脳は投影機となって映画を流し続けていた。
映画の主役はブーンだった。
映画の中でブーンたちは笑っていたり泣いていたり、どれもが楽しそうな姿だった。
彼らは若く、活発で幼稚だった。
幼稚であることが罪であると思っている大人にはなりたくなかった。
しかし時間をとめることはできず、子供達は勝手に大人になっていた。
誰もそれをとめることができない、今まではその通りだった。
ブーンはパソコンの画面が光るのを見た。
ブーンが反射的に画面を見るとメールソフトが立ち上がり、画面に2枚の写真が表示されていた。

( ^ω^)「なんだお・・・」

それはツンから送られてきた写真だった。
だらしなく笑う男の写真と汚れた文字。
酔っているであろう男の表情は酔ったブーンの表情によく似ていた。
自分達も同じ飲み方をよくした、とブーンは過去を色鮮やかに思い出した。
感傷がブーンの眠たげな目を刺激し、うっすらと液体をにじませていた。
液体はレンズのように光を曲げ、汚れた文字を網膜へと届けることができた。

私   達は最  高 の 一年を過 ご しまし     た!

ξ゚听)ξ「いっしょにあの頃に帰りましょう、ブーン」

ξ゚听)ξ「唄いましょう、私達ならきっと上手に唄えるわ」

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閉園寸前になった遊園地で遊び終わった後、僕達はツンの家に帰った。
ありったけの酒とつまみをもって、遊びつかれた体の悲鳴を無視して宴会を始めた。
ツンは楽しそうに歌詞の考察を説明してた。
僕はツンの話をずっと聞いていた。ツンをずっと見ていた。
眠ってしまったツンを僕が隣の寝室まで運ぶとドクオとクーがくっついて眠っていた。
僕はツンをツンのベッドにのせて毛布をかけてあげた。
ツンはナイスバディと言える体格ではなかったが、未成熟にも見えるその骨格でもツンは可愛く美しく見えた。
僕も限界で、ツンのベッドによりかかると、いつのまにか横に倒れて眠ってしまった。
ツンのベッドからは、ツンの匂いがしたような気がした。

――――――――――――――――――――――――――――
閉園になると聞いた遊園地で一通り遊んだ後、僕達はツンの家で打ち上げをすることになった。
それは遊園地で遊んだこともあったが、僕らのオリジナルバンドのCDが発売されることの記念という要素が強かった。
ツンが作詞して僕が作曲した曲をみんなで弾いて唄った。
僕らは大所帯で、もしかしたらバンドではなかったかもしれない。
でも僕達は気の合う仲間達と唄うことが目的だったのだから、形態はあまり重要ではなかった。
僕達はこれからどうするかを決めなきゃいけなかった。
CDは好調に売れてはいけるが所詮はインディーズのなかでも新参でしかなかった。
プロの話が来ているわけでもない、僕達はこれを記念のCDとすることもできたし、プロへの一歩とすることもできた。

ξ*゚听)ξ「ねぇねぇみんな、私達って今、夢を追いかけてるんじゃない?私達は夢を夢だと思って結局追いかけもしなかった。私達はいつの間にか夢の賞味期限が過ぎてしまうのを受け入れようとしてなかった?私達、今、今生きてるんじゃなかったの?」

僕らに未来はなかった。
明日はあっても未来はなかった。
僕達は40、80歳なんかになるつもりはなかったし、なった自分を想像できなかった。
僕達はそれが分の悪い賭けだとわかっていても、その破滅の甘美さにも誘われて、茨の道を選ぼうとしていた。
ツンは現実主義者ぶっていただけだった。
酒によって剥がされた仮面の向こう側には誰よりも情熱を求める理想主義者だった。
それは僕と違っていたが僕と似ていた。
だって僕は現実から逃げたくてロマンを求め、そしてロマンが手に入らないと知っているから現実からも逃げ切れない臆病者だったから。
そんな僕をツンは認めてくれた。

ξ゚听)ξ「ブーンは立派な人間よ。だって現実が自分にとって都合が悪いってわかっていながらも、現実をやめようとはしなかったじゃない。あなたは、本当は強い人よ。あなたがそれを認めないだけじゃない。」

僕の腕の中でツンは僕を励ましてくれた。
感動と、申し訳なさと、心の深部を触られた驚きと、理解者への感謝がごっちゃになって、僕は泣いた。
泣いている僕にツンは事務的な励ましをしなかった、ただツンはその細い腕で僕を抱きしめてくれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――


目が覚めても目は醒めなかった、ずっとそのままであり続けることを望んでいた。
ブーンは上書きされていく思い出に酔っていた。
思い出はずっと投影されていた。
すぐ近くでツンやドクオの笑い声が聞こえた。
なぜそんなに楽しそうなのか、ブーンは気になって仕方が無かった。
パソコンの画面に映るツンからのメールには二枚の写真とツンからのメッセージが載せられていた。

ξ゚听)ξ「最高の一年だったわ!またすぐ会えるって信じてる。愛しているわ、ブーン」

ブーンはメールソフトのアドレス帳から仲間達を探し出した。
ブーンはショボンや兄者やクーにメールを書き始めた。
といっても題名しか書くところはなく、送るべき二枚の写真を添付すると全員に送信した。
送信してから1分もたたずに、全員から一斉に返信があった。
ブーンは驚くことも無くメールを開いた。
ブーンにとって彼ら仲間達は感情を共有できる最高の友人達だった。
その友人達が自分と同じように、過去を想うことを信じて疑わなかった。


 _
( ゚∀゚)(´・ω・`)川 ゚ -゚)(‘A`)【私達は君を忘れない】( ´_ゝ`)(´<_` )从 ゚∀从

ξ゚听)ξ「行きましょうブーン、ここはあなたのいるべき場所じゃないわ」

( ^ω^)「そうだお、僕はツンたちと一緒の、あの夏に行くんだお」

ブーンは椅子から立ち上がった。携帯電話も社会的地位もなにもかも、今のブーンには必要なかった。
学生の頃に来ていた服に着替え、しばらく弾いていなかったギターを担ぎ、それ以外は何も持たずに部屋を出た。
すでに太陽は山の陰に隠れようとしてた。
赤外線が直撃するかのような熱い夕日に目を細めることもなく、ブーンは歩き出した。
どの方向へ歩けばいいかはわからなかった。
それでもブーンは心配などしていなかった。
ブーンの隣にはツンがいて、ブーンの手を引っ張っていた。
ツンはあの頃のように楽しそうに唄っていた。
ブーンはツンに合わせるように唄い始めた。
私達は最高の一年を過ごしました!とツンが叫んだ。
ジョルジュがハモリを合わせドクオが合いの手を入れた。
彼らは唄いながら歩き始めた。
ブーンはその歌を知らなかったが、不思議とメロディをなぞることができた。

ξ゚听)ξ「ほら唄いましょうブーン。あの夏のように唄いましょう。あの夏に帰りましょう。私達は間違っていたわ。私達はこんなところにいるべきじゃないの。だって楽しくないじゃない。さあ帰りましょう。私達は忘れてないわ。」

ツンが僕を急かして、僕はやっと唄う決心がついた。
僕が唄い始めるとみんなが笑顔になった。
僕達は振動を共有して楽しさを燃料にした。
僕達は唄って、山に隠れる太陽に追いつくように歩いた。
僕達はオレンジ色の太陽に、やっと追いつくことができた。
実際は僕らが追い越して行ったのだ。
僕らは行き過ぎた道を戻ってきただけだった。
僕達はやっと、あの夏に帰ってくることができたんだ。

夏はすぐそこにあった。
僕らは通り過ぎた夏であっても取り戻すことができた。
通り過ぎた場所に大切なものを忘れてきた。
場所自体も大切なものの一つだった。
そしてそこにいるはずの仲間達も。
この正しい夏をずっと唄い続けるんだ。
ツンや最高の友人とともに。

投下終了です
シベリアらしくひっそりと

お疲れ様です、シベリアらしくひっそりと

おつおつ!

見つからないとでも思ったか乙

あー、いいなこれ

地の文もうちょっと改行してほしい
自分にはこれを読み切る忍耐はなかった

紅白投下期間終わったな

( ^ω^) 

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